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第108話 今会っている人は

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-09-21 06:01:02
「今回の結果が良ければ、地域向け企画が続くかもしれない」

 景都は写真から顔を上げる。

「正式に決まったら、行きたい?」

 私は海老天の衣を箸で割った。

「今の時点では、行きたい。まだ正式じゃないから、即答していいのか少し迷ったけど」

「嫌だよ。でも、まだ決まってもいないのに止めろとは言えない」

 低い声に、前と同じ欲望が残っていた。

「景都らしくない」

「今、褒めた?」

「どうだろ。自分で考えて」

 景都は少しだけ笑った。出張を止める言葉は続かなかった。

 会計で私が先に伝票を取ると、景都は財布を出したまま止まった。

「今日は私が払う。迎えに来てもらったから」

「迎えを頼まれた上に、夕飯まで出してもらうなら俺だけ得をする」

 景都の財布は開いたまま、黒いカードの縁だけが見えていた。

「じゃあ、景都が次に出張した時は私が迎えに行く。その時は景都が払って」

「香港の時か。俺は夜遅くなるぞ」

「今くらいはいいでしょう」

 店を出ると、日付が変わりかけていた。

 蕎麦店の駐車場は静かで、足音が車の間に響いた。

 車へ乗る前、景都が「家まで送る」と言う。
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